ロシア制裁と暗号資産
みなさんはビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)を持っていますか。かつての1ビットコイン40円が現在約500万円(2022/03/19)ですから、1,000万円も夢じゃないと思っている人も多いでしょう。しかし、2022年2月24日のロシアのウクライナ侵攻で政治経済状況も大きく変わっています。それがどのように影響を与えるのか、解説しましょう。
暗号資産の価格形成要
暗号資産も含め、価格が変動する要因は基本的には需要と供給です。需要が供給に比べて増えれば価格は上昇し、供給が需要に比べて増えれば価格は下降します。いままでの暗号資産の価格上昇は、
1.将来、需要が大きくなると予想される
2.利用できる店舗等が増える
3.暗号資産の取引所が増え、利用者が増える
といったことが要因で上がってきました。
2の例を挙げましょう。例えば、昨年テスラ(電気自動車)をビットコインで購入できると発表された時は、ビットコイン価格は13%上昇しました。しかし、この話には後日談があります。暗号資産の取引にはコンピュータによる「マイニング」というプロセスが必要なのですが、これに大量の電力が使われます。そこで環境への配慮から、購入がその後停止されたのですが、その際ビットコイン価格は15%急落しました。まさに需要によって価格が変わる例ですね。
一般的な経済情勢が、需要に影響を与えることは当然あります。例えば、インフレのときは金と同じように暗号資産の需要が増えます。また、金利上昇の局面では、暗号資産には金利がつかないため需要は減ります。いま世界では原油高などがインフレを引き起こしています。米国では金融政策を決める連邦準備理事会(FRB)が金利引き上げを3月16日に発表しました。発表後もしばらく4万ドルを下回っていたビットコインは、19日12時時点で、4万1700ドル超まで上昇しました。リーマンショックからの量的緩和を縮小し、金利を引き上げることは想定内だったため、インフレの影響の方が価格に反映されたのではないでしょうか。
ロシアのSWIFT排除の影響は
経済制裁の「最終兵器」としてSWIFTからロシアを排除することになりました。SWIFTは国際銀行間通信協会のことで、自分の口座のある銀行から海外の銀行に送金する時、必ず利用するネットワークのことです。直接銀行間で資金のやり取りをするのでなく、コレルス銀行と呼ばれる中継銀行を通じて送金するため、結果的にその手数料や為替手数料もかかり、海外送金の手数料は高額なものとなります。おおよそ1,000円~3,000円かかります。
まあ、普通に生活している分には海外送金を利用する機会はないですよね。でも、留学しているお子さんや海外の家族に仕送りする人たちは毎回手数料が発生するといのは、イタくありませんか。これが暗号資産なら、送金手数料無料の取引所もあり、タダで送れるのです。実は暗号資産の使い方の一つとして海外送金があるのです。では、これをロシアの企業が活用したら、どれだけの需要増につながるか想像できますか。
そこは政府も気づいているらしく、このような記事がありました。
「仮想通貨、対ロシア監視強化 政府、自主規制団体に要請へ」(日本経済新聞 3月12日)
(以下引用)
「政府はウクライナに侵攻したロシアとの暗号資産(仮想通貨)の取引について監視を強める方針を固めた。交換業者の自主規制団体に対し、近く規制を強めるよう求める。米欧と歩調を合わせ、金融面からロシアへの封じ込めを強化する。」
しかし実際には暗号資産の取引を規制するのは難しいので、今後の暗号資産の価格に大きく影響を与えるのではないかと予想しています。
暗号資産は持つべきか
暗号資産を購入して、売却益を狙いに行くか、資産形成の一つとして考えるか、どう考えればいいでしょう。肝心なことは暗号資産も売却益に税金はかかるということです。株式投資と同じでは、と思うかもしれません。しかし、単に売却して現金化した時だけでなく、ビットコインを売却してイーサリアムを購入するような暗号資産の交換や、暗号資産でモノを買った場合も税金がかかることに注意です。また株式投資の税率は最大20%ですが、暗号資産取引は雑所得扱いで給与所得と合計した金額に課税され最大税率は55%になります。
暗号資産の高騰があったのが2017年末から2018年にかけての頃で、このときに相当の「億り人」が産まれています。この人達を中心に税務当局が仮想通貨取引への調査を昨年から強化しているという噂もありますので、お金の真実を理解し賢い資産形成を考えましょう。
それではまた。
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